ヒューマンドキュメンタリー「二人の旅路〜日中 激動を生きた京劇夫婦〜」

またNHKです。

さっきまで放送していた番組です。
先週までの「ファミリーヒストリー」の予約が残っていただけで、
期待していなかったんですけど、ものすごく感動しました。


戦後すぐに中国人の母と日本人の父の間に生まれた女性とその夫の物語でした。
ふたりとも京劇の俳優だったそうですが、女性は父が日本人であることで
特に文革の時代、迫害を受けてしまいます。
競争の激しい京劇の世界で、その後も出自のことで嫌な思いをしたようです。
そんな妻を守るために、夫は、富と名誉の約束された一級俳優の地位を
捨てて妻と一緒に日本に移住します。

日本に来てからは工場などで働き、料理を覚えて中華料理店を開きますが、
店は1年半で閉店。現在は残留孤児手当をもらって福岡の公営住宅でひっそりと
生活しているそうです。

そんなとき、中国のとある京劇の劇場が閉鎖になるということで、
その舞台で長く主演を努めていた夫がその最後の舞台に呼ばれ、20年ぶりに
舞台に立ちます。

演目は「覇王別姫」。これもまた夫婦愛を描いた物語です。

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夫70歳、妻66歳の夫婦ですが、さすが、二人とも元京劇俳優。
ポーズをとると、あっという間に、古典芸能を極めた人ならではのオーラと
いいますか、品といいますか、何かがぱあっと背後から立ち上る感じでした。

覇王別姫」は夫婦で演じたらどうかというオファーがあったらしいですが、
奥さんの方は固辞したそうです。その理由は、「最後が悲しい別れだから」。
たとえお芝居でも、夫婦で演じたくないんだそうです。

こんなに固い絆で結ばれる夫婦もいるんだなぁと思いました。

最後の舞台の翌日、奥さんも私服で舞台に立って、ポーズを取ってみます。
背筋がぴっと伸びて、カッコ良かったです。
それをにこにこしながら見る夫。

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最後に、人生はちょっとしたことでどんどん変わっていくものだとぽつりと
語っていました。

しかし、戦争とか、偏見とか、そんなことでこんな風に才能がつぶされていく
なんて・・・なんてもったいないんでしょう。

それだけ実績のある人なら、せっかくだから、舞踏科があるような芸術大学とか、
そういうところで講師をしてもらうなんていうことはできないんでしょうか。

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たぶん、この話、映画になると思います。
それだけの内容です。

映像は情報量が多いメディアだと思いますが、だからこそ、こういう上質の
番組のために使ってほしいです。