今週のお題「もうダメだ」からの逆転


映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』見たい!
「もうダメだ」から逆転したエピソードを教えてください

社会人になってから数年、一念発起して英語を一生懸命勉強しようという気になりました。
英会話学校に通い始めた数ヵ月後、たまたま長い休みを取れることになったので、
学校の、海外でのホームステイ+現地の学校の授業付きのプランに申し込みました。

英語熱が高まってそんなことをしていたわけですが、数か月ではたいしたレベルにはなっておらず、
今から思えば、実にたどたどしいものでした。

行き先はアメリカのとある大都市。
映画やドラマで見てとてもきれいな街でしたので、行きたかったんです。
ミーハーですね。

さて、スーツケースを抱えて意気揚々と出かけて行ったところ、びっくり。
日本で聞いていた話と全然違うのです。
授業では、使いもしないテキストを新たに売りつけられそうになるし、
現地の教室のディレクターから日本に送られてきたホームステイ先の家族の紹介文もウソだらけ。

そのディレクターはちょびひげを生やしたカリビアンなおじさんでした。
こちらとしては、たどたどしいながらもちくちくと話が違うと伝えていましたが、こちらのことをナメているのか、毎回違うことを言ってはぐらかそうとします。
「こんな英語できないやつ適当にあしらっとけばいいんだ」という空気が全身を包んでいました。
あげくの果てに、何度目かの話の最後には、手で払うような態度をとられました。
日本で「しっしっ」という音をつけてやる、あれです。

どうせ私は黄色い日本人だし、英語できないし・・・と思い、異国の地で、自分の情けなさに涙ぐみました。
このまま帰りの日まで我慢するしかないか・・・。
しかし・・・ちょっと待てよ。いくらなんでも、私は生徒だろう。
生徒にそんな態度をとっていいのか・・・あまりにも失礼だろう!
私だって仕事してきたけど、私はお客さんにそんな態度とったことないぞ!!
・・・何かが切れた音がしました。
(ちなみに、日本では、私がサービスや商品についてクレームを言うなどということは、めったにありません。)

どん底まで落ち込んでいた私の気持ちは一気に反対方向に向かって爆発したのでした。

ちょっとゆっくり話をさせてくれと会合を依頼し、ぶちまけました。

私が日本で聞いた話と実態は全然違う。証拠はこれ(手紙や書類)。
あなたが言ってきたことも途中で変わっている。
あなたは何月何日にこういうことを言ったが、その翌日にはこういうことを言った。
その後確認のために何月何日に日本にも連絡をした。
日本の担当者があなたと話したという内容はこうだ。
しかし、あなたはこういうことを言った。
しかも、こういう態度をとった。あきらかに失礼だろう!
それに、日本から書類がFAXで届いているのに見せないようにしただろう。
今日の分は私が早く来てFAXの前で受けとっといたから、よく見ろ!
しかも、あんた私を適当にあしらおうとしただろう。ごまかそうとしたね。
あんたの態度がおたくの学校全体のブランドイメージ下げることになるってわかってんのか!
(日本人なめんじゃないぞこらぁ)

これらの話の途中で彼が、ディレクターは、「日本語のできる通訳を連れてこようか」と言いました。
さすが、交渉慣れしていますね。
先方が明らかに交渉を自分に有利に進めようとしているのがわかりました。
2対1になっちゃいますから。それに、都合よく曲げて訳されてまたごまかされそうです。
もうこれ以上の水かけ論はイヤだ!
ということで、ますます、負けたくないという気持ちになりました(火に油でしたね)。

「あなたは私の言っている意味がわからないということですか?これまで私が話したことに対してあなたは反応しているし、会話は成立していると思うんですが。今まで言ったこともわかっていなかったということ?」
と更に問い詰めました。
すると彼は、「いや、理解はできている」と答えました。
そりゃあそうです。彼の運営している英会話学校に何日も通っていたんですから。
「じゃぁいらないでしょう。」と言ってそのまま進めました。

彼も最後には、自分の非を認め、二度とこういうことはないようにすると言いました。

・・・話をしている間、自分でも驚くほど英語がすらすらと出てくるんです。
授業では、うーん、なんて言って考え込むことも多々ありましたが、すらすらと・・・。
もちろん難しい表現とか、単語とかは使っていないわけですが、とにかく、どうやってこの交渉に勝つか!ということを真剣に考えていたので、持てる能力をすべて使い果たしたという感じでした。

後になって思えば、結局、平和な数週間の授業よりも、この、ディレクターとの交渉(というかケンカ)のほうがはるかに有意義だったように思います。
授業ではロールプレイングなんてこともやってましたが、こちらはまさに実践でしたし。
異国の地で外人相手に英語だけで交渉(というかケンカ)ができたということが何より自信になりました。
実際は、英語よりも私の剣幕に恐れをなしただけだったのかもしれませんが。

あの時のディレクターさん、名前忘れちゃったけど、ごめんなさい。そして、ありがとう。
おかげでその後、あの時の自信を糧に、英語の勉強が進みましたよ。