岡本太郎のこと

昨日の昭和の話で思い出したのですが...ちょっと前に、近代美術館で開催されていた岡本太郎展に行きました。
(既に終了しましたが、青山と川崎に美術館があります。)


私にとって岡本太郎のイメージといえば、「爆発」です。
目をぎょろぎょろとさせながら、「芸術は爆発だっ!」と叫んでいる人。
結構テレビに、それもバラエティ番組のようなものにも出ている、”アブナイ芸術家”だと思っていました。


大学生の頃、彼の母親である岡本かの子の小説を読んだら素晴らしく、読んだからこそ、あ〜あ、お母さんは
すごい人だったのにねぇと思ってしまいました。


しかし、岡本太郎の作品は、ただ単に、見ていておもしろいしほっとする。
何かしら伝わってくるものがあるので、軽い気持ちで展覧会に行きました。


ところが、解説を読みながらいくつか作品を見ていくうちに・・・ん? ちょっと待てよ。
岡本太郎って、ものすごい人だったんじゃないの? と思い始めました。


ものすごく勉強もしたし、さまざまな経験も苦労もした人。それらを通して深い洞察力を身に付けた人。
ひとつひとつ解説を見ながら作品を見ていくことで、いかにすごい人だったかということを思い知らされました。


***


岡本太郎といえば、大阪万博太陽の塔
1970年に開催された大阪万博は、人類の進歩と調和をテーマに、6400万人もの入場者があったそうです。
それって、日本の二人にひとりくらいだと思うんですが、その人たちが何を見に行ったのかというと、
前年成功したアポロの月面着陸で持ち帰った「月の石」とか、当時最先端の技術、未来技術の数々だったようです。


みんなと同じことをしていれば自分も幸せになれると信じていられた時代だったのかもしれません。
1950年代、1960年代にはそれぞれ、3種の神器なんていうものもありましたし。
想像ですが、新しい技術や機械が自分たちの生活を幸せにしてくれると信じて、そのキラキラと輝く場所に足を
運んだのでしょう。


そこに太郎は、「進歩に対するアンチテーゼ」だとして、太陽の塔を建て、その中に生命の樹というオブジェクトを
配し、進化の過程を表現したんだそうです。
すなわち、太陽の塔が表しているのは、生命のエネルギーなのだそうです。


・・・アンチテーゼ、と言ってますが、実は、見事に全体をまとめ上げたんじゃないかと思いました。
なぜなら、1970年当時の最先端あるいは未来の技術はいずれ真新しく無くなります。
当時展示されていた技術のうち、リニアモーターカーはまだですが、携帯電話やテレビ電話、動く歩道などはすでに、
今となっては普通のものです。
今はもっと新しい技術が生まれています。
そうした新しい技術を生み出すものは何か、というと、それこそが、生命のエネルギー。
真中に太陽の塔があったからこそ、全体がまとまったんですね。


展覧会後、著作を何作か読みました。
そこで語られている言葉の数々が、「うーむ」と納得させられるものばかりでした。


同じ時代を生きていたにもかかわらず、そのすばらしさに気が付けなかったことを心から後悔!


それでは、また明日。